ラクム(ペトラ)とその周辺からは、岩窟墓のみならず、住居址も見つかっています。この展示では、主にワディ・ムーサやザントゥールのナバテア邸宅址からの出土品や、冬の饗宴の間(トリクリニウム)の復元を通じて、ナバテア人の住空間と生活を解明していきます。また主に宗教儀礼に用いられたと思われる、独自の様式を持つナバテア式彩文土器についても、代表的な土器の展示を通じて焦点を当てます。
ナバテア王国の豪華な邸宅内で、部屋の床面を装飾していたモザイクです。
1世紀のナバテア王国時代に建てられたこの大型の邸宅の遺跡は、1996年にワディ・ムーサの中心地で、道路建設の工事中に発見されました。しかし不運にも、建設工事により邸宅の一部は破壊されてしまいました。この邸宅の遺跡から出土して、修復保存され、今ここに展示されているモザイクは、邸宅の床面を飾っていた元のモザイクの、東側部分の一部のみです。横にある復元予想図が、元々のモザイク全体を示したものです。
このナバテアのモザイクは、現在明らかとなっているヨルダン最古のモザイクのひとつです。モザイクは、中央部分にもともと2つの円形のメダイヨンの装飾が施され、その周囲を長方形に幾何学文様が囲む形でした。邸宅の床面の構成は、ペトラ地域のナバテアの様式を反映していますが、モザイクの配色や幾何学文(きかがくもん)は、同時代のイタリア全土でみられた、ローマ様式のモザイクに由来するものです。
このモザイクの横に展示されている、白黒のモザイクも、同じ邸宅址(あと)から出土したもので、別の部屋の床面を飾っていたと思われます。
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